設立主旨書
日本のインターネット利用人口は、平成24年度末で普及率で79.5%(総務省)です。この数字には、パソコン・携帯電話・スマートフォン・ゲーム機を含むさまざまな接続端末が含まれ、インターネットを利用する人は、全人口の8割近くになっています。
【デジタル・デバイド(情報格差)とは…】
日本では、2000年11月に成立した「高度情報通信ネットワーク社会形成基本法」(IT基本法)の中でデジタル・デバイドが定義され、その是正に向けた取り組みが数多く検討、実施されました。コンピュータを使いこなせない人や、貧困で情報機器を入手出来ない人が、一層困難な状況に追い込まれ、情報技術が社会的な格差を拡大する現象がデジタル・デバイドです。
テレビやラジオで、インターネットの利用を前提とした「詳しくはWebで…」「応募はWebから…」などの言葉を聞かない日はありません。パソコンを持っていない人、持ってはいるが使い方がよくわからないという方は、本来享受できるはずの情報を受け取ることができないというわけです。
また、東日本大震災では、インターネット上のツイッター・フェイスブックなどのソーシャルメディア利用者と、そうでない人たちが受け取ることのできる情報に大きな格差がうまれたことは記憶に新しい現実です。その後、各方面でソーシャルメディアを使った情報共有のしくみが構築されましたが、それは、さらにデジタル・デバイドを大きくしてしまうという危険性も生んでいます。
デジタル・デバイドの要因は、料金(パソコン購入価格・インターネット接続料金など)と知識(パソコンの使い方・情報リテラシー等)と考えられますが、使ってみたいけどわからないし今さら…、といった動機の欠如も大きな要因であると思われます。
政府の高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部(IT戦略本部)は、平成22年5月、新たな国民主権の社会を確立することを目的に、①国民本位の電子行政の実現、②地域の絆の再生、③新市場の創出と国際展開を重点戦略(3本柱)として、「新たな情報通信技術戦略」を策定しました。今後、ますます社会は情報化し、パソコンなどを使う技術の有無によって、個人の可能性が大きく左右されてしまうデジタル・デバイドは日常生活における大問題です。
【ネット・トラブルとは…】
パソコン・携帯電話・スマートフォン・ゲーム機…と、わたしたちの日常には、インターネット使用を前提とするサービスがあふれており、すでにその存在は「家電」として認識されています。
しかし、これらの機器を安心安全に使っている、といえる人はどれくらいいるのでしょう。連日、インターネットを利用したトラブル・事件が報道されています。
わたしたちは、簡単に使えるようになった機器を通して日常的にインターネットを利用したトラブルにさらされ続けているのです。時にはトラブルに巻き込まれていることに気がつかずにいることさえあります。
パソコンを使っていたら知らないホームページが勝手に表示されるようになった、携帯電話に高額な請求文書が届いた、などはめずらしいことではありません。これらの事象に遭遇したとき、冷静に対応する「知識」さえあれば、問題の解決を含め、遭遇する可能性も限りなくゼロに近づけることができます。
ちょっとした悪ふざけや気軽に発信したつもりの情報、見えない相手に不用意な画像を送信してしまった、などから自らの人生をだいなしにしてしまう結果になった…、など、ソーシャルメディア上でのトラブルは、インターネットのしくみと使い方を知っていれば未然に防げる事例だといえます。
わたしたちは、日常生活の中で「赤信号では止まる」と知っているので交通事故を回避することができます。しかし、最低限の「赤信号では止まる」という基本的なことさえ知らずにインターネットを利用しているからこそ、多くのネット・トラブルや事件が起こるのです。
【デジタル・デバイドとネット・トラブルをなくすために…】
これらの問題を解決するため、わたしたちは、身近なところから的確な情報を提供できる組織や、情報を提供できる人材の育成が必要だと考えました。「今さら、知らないことが恥ずかしい」という世代も気軽に相談できる駆け込み寺のような情報発信地になりたい、デジタル・デバイドをなくし、すべての人が欲しい情報にアクセスできるようになって欲しい、また、ネット・トラブルによる被害者をひとりでも少なくしたい、と考えています。
具体的には、「シニア等初心者向けパソコン講座」、「ケータイ・タブレット端末・スマートフォンを安全に使うための講座」、「ITトラブル相談会」、「災害対策IT講習会」、「シニア情報生活アドバイザー養成講座」などの事業を行っていきます。
しかし、このような活動は、誤解を生みやすい一面も持っています。
パソコンやインターネットのことを相談したい、と考えたときに、その相手が個人活動の場合、どんな活動をしている人なのだろう、その背景は…と考えるのは当然のことで、わたしたちにアプローチしていただく前に門戸が狭くなってしまうことに、限界を感じています。
このような状況を踏まえ、営利を目的とせず、身近で社会的信頼度のある特定非営利活動法人としての活動が望ましいと考えました。活動内容を積極的に公開することで、信頼に値する団体だと認識していただき、また、人材育成や活動を組織化し、持続的に活動することを目指し、わたしたちは「NPO法人 ICTメディア研究会 おきらくごくらく」の設立を決意しました。
名称の「おきらくごくらく」は、情報通信機器を正しく安心安全に使えるよう、身近なところで「おきらく」に学んだり情報収集し、「ごくらく」なIT生活を送っていただくための団体である、という意味です。
行政や公的機関、地域コミュニティ等各方面と連携し、デジタル・デバイドを減少させ、ネット・トラブルの被害をゼロに近づける、地域に根差した息の長い活動を行っていく所存です。
みなさまのご理解、ご協力、ご支援を賜りたく、よろしくお願い申し上げます。
2014年9月3日
法人の名称:NPO法人 ICTメディア研究会 おきらくごくらく
設立代表者:春日 秀美(職業上の呼称:春日 有理沙)